『恐怖新聞Ⅱ』は、オカルト漫画の名匠・つのだじろうによる『恐怖新聞』の正式な続編です。掲載誌は秋田書店の少女漫画誌『サスペリア』で、連載期間は1990年から1993年、単行本は全6巻。
前半は「恐怖新聞」に翻弄される本堂幽子の物語、後半は“真・恐怖新聞”の名で九重みやびと悪の霊団の対決へとスケールを広げます。
前作の持つ不条理ホラーの核を保ちながら、少女漫画誌らしい心理ドラマや関係性の機微を強めたことで、続編ならではの読み味が際立つ一作です。
『恐怖新聞Ⅱ』作品概要
作者:つのだじろう/出版社:秋田書店/掲載誌:サスペリア/レーベル:少年チャンピオン・コミックス/発表:1990–1993年/巻数:全6巻。
物語は前作『恐怖新聞』から約10年後の世界を舞台に、本堂幽子が「恐怖新聞」を受け取ってしまうことから始まります。
毎回読むたびに寿命が100日縮むという“契約”設定はそのままに、今作では「合体霊魂」や「悪の霊団」といった用語・スケールが追加され、後半でタイトルも「真・恐怖新聞」として展開。続編らしく世界観を拡張しつつ、恐怖の源泉=新聞のルールを厳密に運用することで緊張感を持続させます。
あらすじ

『恐怖新聞』の惨劇から10年。平凡な女子高生・本堂幽子の元に、ある夜「恐怖新聞」が投函されます。記事は未来の惨事を冷酷に告げ、読むたびに寿命が100日縮む。
幽子は謎めいた同級生・田垣史人(その身には“鬼形礼”の魂が宿る)と手を取り合い、新聞の連鎖を断ち切ろうとするものの、やがて二人は運命に飲み込まれていく——。やがて霊界から遣わされた九重みやびの登場によって、物語は個人の恐怖から、霊的な勢力同士の対立へ。
主なキャラクター紹介
- 本堂幽子
- 恐怖新聞の被害者として翻弄される少女。平穏な日常が崩壊してゆく過程と、恐怖に向き合う意思が本作のドラマを牽引します。物語の中盤以降、彼女の存在は大きな転機を迎えることに。
- 田垣史人(鬼形礼)
- 幽子のクラスメイト。前作の主人公・鬼形礼の魂が宿る存在として描かれ、守護者のような役割を担います。理(ことわり)に縛られた“新聞のルール”と人間の情の狭間で葛藤する姿が印象的。
- 九重みやび
- 幽子と鬼形礼の魂が一体となった“合体霊魂”。高い霊力で恐怖新聞の背後にいる悪の霊団へ挑み、物語の後半を一気に加速させます。半人半霊ゆえの存在感が、続編の象徴的ビジュアルにも。
- 御前零士/南郷史絵 ほか
- 恐怖新聞の被害者や、霊能力者たち。個々のエピソードは後半の“群像ホラー”として、新聞の呪いが社会へ浸食する広がりを示します。
作品のテーマ・魅力

寿命が「100日」ずつ削られる、合理で逃げ切れない恐怖
『恐怖新聞Ⅱ』の根幹は、新聞を読む=寿命が100日減るというルールの徹底ぶりにあります。
軽い気持ちで覗いた一面、偶然目に入った見出し——その些細な行為にも対価が科される。人の“知りたい欲”と“生への執着”を同時に試すこの設定は、単なる怪談を超え、倫理と合理の境界を曖昧にします。
新聞は「読まなければいい」のか? 読まないと惨事を回避できないとしたら? このジレンマがページを捲る手を止めさせません。
少女漫画誌連載がもたらした「感情の深度」
前作は少年誌発のスピーディな恐怖譚でしたが、今作は少女漫画誌『サスペリア』での連載。関係性のクローズアップや、主人公の心の揺れに紙幅が割かれ、恐怖の“痛み”がより肉薄します。
幽子と田垣の絆、そして「合体霊魂」という超常的な愛の形は、ホラーでありながらロマンス的カタルシスを生む。ジャンルの橋渡しとしても評価できるポイントです。
前半=日常崩壊、後半=霊的戦いへ。二部構成が生む読後の余韻
前半は“新聞がもたらす不幸”を描く1話完結的な緊張感、後半は九重みやびを中心に悪の霊団との対決を描く連続劇の熱量。恐怖の温度が変わることで、同じ題材に新たな解像度が与えられます。
特に、合体霊魂の造形や、少年・少女・幼子へと自在に形を変えるビジュアルは、90年代ホラーの幻想性を端的に体現。世界観の拡張という続編の難題に、正面から応えた展開です。
“用語”が光る世界構築
「恐怖新聞」「驚喜新聞(幽霊用の新聞)」「合体霊魂」など、劇中で説明されるキーワードが物語の骨組みを固めています。荒唐無稽に見える概念も、ルールに即して配置されるため、読み進めるほどに“この世界はこう動く”という納得が積み重なります。設定が一人歩きせず、エピソードに駆動力を与えている点は本作の美点でしょう。
読者へのおすすめポイント
- 昭和〜平成の日本ホラーの系譜をたどりたい方に。前作からの正統続編として、設定の継承と発展を両立。
- 心理描写の濃いホラーが読みたい方に。少女漫画誌連載ゆえの情感の厚みが、恐怖を“自分事化”してくれます。
- オカルト×バトルのハイブリッド感が好きな方に。後半の“真・恐怖新聞”編はスケール感のある霊的対決が魅力。
- 電子で手軽に読みたい方に。主要電子書店で配信があり、巻ごとの区切りで読みやすいです。
アニメやドラマ化情報
『恐怖新聞Ⅱ』そのものの直接的な映像化は確認できませんが、原作シリーズ『恐怖新聞』は複数の実写化・映像化が行われています。たとえば、2004年にはつるた耕司監督の映画『予言(Premonition)』が公開。原作のアイデアを核としたJホラー作品として知られています。
また、2011年には大森研一監督の映画『恐怖新聞』が公開されています。こちらも“新聞が未来の災厄を告げる”というモチーフを受け継いだ派生的映像化です。
さらに、2020年にはフジテレビ/東海テレビ系で連続ドラマ『恐怖新聞』が放送(全7話、2020年8月29日〜10月10日)。配信はFODなどで視聴可能です。作品世界の再解釈として、現代的な人物造形とルール運用が試みられました。
まとめ
『恐怖新聞Ⅱ』は、前作の冷徹な“ルールホラー”を継承しつつ、少女漫画誌由来の情感とスケール拡張で、恐怖の輪郭を二重に濃くした続編です。
幽子と田垣(鬼形礼)、そして九重みやびへと継がれる“意思”は、恐怖に呑まれまいとする人の尊厳そのもの。
読みやすい6巻完結の中で、恐怖の原理・愛のかたち・世界の構造を段階的に提示する構成の巧さも光ります。前作ファンはもちろん、90年代ホラーの滋味を味わいたい方にも強くおすすめします。


